
朝日のあたるファーム、春の畑しごと始まっています
この日、朝日のあたるファームメンバーが訪れたのは陸前高田市の米崎りんご農家「イドバダアップル」の畑。
今回取り組んだのは、りんごの花を摘む「摘花(てきか)作業」とりんごの木の根元に竹チップパウダーを撒く「マルチング作業」の2つです。
摘花で摘み取った花は、乾燥させて受粉用の花粉に――。
畑に撒く竹チップは、伐採した竹を粉砕してファームが製造した土壌改良材です。
花粉も竹チップも、他の地域から調達することもできますが、地域の中にある資源を活用し、りんごづくりと、農地の環境づくりの両方を支えていく。
そんな取り組みが、ファームの現場で進んでいます。
作業場所は4か所、合計で約1ヘクタールのりんご畑。のべ10名以上のファームメンバーが現地に入り、イドバダアップルの吉田司さんとともに汗を流しました。
りんごづくりの要 「摘花」と「受粉」の循環
春のりんご栽培に欠かせないのが、摘花です。
花をすべて実にしてしまうと、栄養が足りず実が小さくなったり、木が疲れて翌年に花が咲きにくくなることもあります。そこで、花の中から、良いものだけを残し、他を摘み取る作業を行います。
もうひとつ、大切なのが「受粉」の作業です。
花の咲く時期は短く、人工授粉はこの限られた期間に集中して行われます。

「これまでは他の地域から花粉を購入していたけど、できれば地元のものを使いたかった」と話すイドバダアップルの吉田さん。

吉田さんは
「今シーズンは、思っていたより早く花が咲いてしまって。花粉を採るタイミングに間に合わないかもしれないと慌ててファームに連絡をしました。快く対応してくれて助かりました」と話します。

この日は、別の農家の畑を訪問し、早咲きの品種「王林」の花を摘みました。
これを乾燥させ花粉を採り、受粉用の花粉として活用します。吉田さんだけで一つひとつ摘むのは大変な作業ですが、人手があることでタイミングを逃さず摘花ができました。
摘花された花は、こうして地域をめぐる大切な資源として活用されています。


ファームの利用者は、一輪ずつ花の大きさや開き具合を確認しながら、丁寧に花を摘みました。
利用者のこの日の仕事は摘花まで。
ファームの職員は別の畑に移動し、草刈りをしていました。
これは後日のマルチング作業に向けた準備。草が残っていると、チップが地面になじまず、効果が薄れてしまうからです。
見えないところで準備をする職員の支えも、ファームの力のひとつです。

伐採された竹が、りんごを育てる
2日目の作業は、マルチングです。
竹チップをりんごの木の根元の土を覆うように撒いていきます。竹チップは、土の保湿や雑草抑制・病害虫予防などの効果があり、畑の健康を守る資材として使われています。
この竹チップをイドバダアップルが使用するのは初めて。
これまでは、1ヘクタール分の市販の竹チップを購入するのは非常に高コストとなるため、行うことができませんでした。
しかし、今回使用した竹チップは〝朝日のあたるファーム直送〟。
竹伐採の副産物の有効利用ができ、土壌改良にも着手できました。

地域で放置され〝困りごと〟として伐採された竹が、今や陸前高田の特産品 米崎りんごの〝サポーター〟として、その成長を支えています。
「困ったら『助けて』って言っていい」
ここで、4月に入職した生活支援員・相談支援員の千葉さんに、この1ヶ月を振り返ってもらいました。

「農作業が楽しくてしょうがないです!
体力勝負なところもあるので、若い利用者さんや指導員の地野君に『筋トレやマッサージを教えて』とか『分かんないから助けて』って言うと、みんながたくさん教えてくれるんですよ」と千葉さん。
困っていることは頼っていい――。
そんな優しさも循環しているファームの現場です。
しっかり工賃、しっかり産業参加!
朝日のあたるファームは2025年4月に開所し、その初月から「16日間通所した利用者に5万円を超える工賃」をお支払いすることができました。
「しっかり工賃」「しっかり産業参加」という目的に向かって、順調なスタートを切っています。
これからも、朝日のあたるファームが地域とともに歩んでいく様子をお届けしていきます!今後の活動が、ますます楽しみです!

取材・文 板林恵