休眠預金活用事業



農福連携進捗


地域に眠る資源を、いのちある農地へー朝日のあたるファームが描く”循環”のかたち【前編】


朝日のあたるファームの現場で、こんなポーズをしているみなさん。
……これは、「みんなでガッチリ稼ぐぞ!」というポーズ。
いったい、どういうことでしょうか。

捨てられてしまうものを、堆肥(たいひ)という資源に

朝日のあたるファームでは、利用者が農業に参加しながら、仕事のやりがいや自信をつけ、次のステップにつなげていく就労支援を行っています。

その中心は、「農福連携」の取り組み。

農作業や、放置された竹林の伐採作業などを仕事として請け負っています。

そのなかで、たとえば、りんご農家が実つきをよくするために、毎年冬に切り落とす枝や、竹林の整備で大量に出る伐採竹などは、処分に困るものでした。

朝日のあたるファームでは、それらの枝や竹を粉砕機でチップ状にし、他の有機物と混ぜ合わせて、しっかり発酵させることで、堆肥へと生まれ変わらせてきました。

出来上がったものは、地域の畑へと還元し、再び作物を育てるサイクルをつくってきました。

産業・福祉・環境をつなぐ「循環型農業」モデルの実証へ

環境省の「令和7年度 地域の資源循環促進⽀援事業 『循環型ビジネスモデル実証事業』」において「農業・漁業残渣の活用と障がい者就労支援による循環型農業」を実証することが採択されました。全国15団体のうちのひとつです。

このプロジェクトでは、

農業・漁業の現場で廃棄されてきた素材――
・木材の製材時に発生する杉の皮(バーク)
・養殖施設に付着する海洋残渣(ざんさ)
を、堆肥として製造・販売をするものです。

地域の森林組合や製材所では、杉の皮が年間で100トンも発生しており、処分に大きなコストがかかっています。

杉の木材加工時に発生するバーク

また、漁業の現場でも、養殖施設に付着する大量の海藻を産業廃棄物として処分しており、その処分コストが大きな課題になっていました。

実はこの海藻、堆肥化するにあたり、この隙間に菌が入りやすく、菌類が育ちやすいのではないかと、堆肥の原料としてもとても有効的かもしれないと、今回活用が検討されました。

未利用資源に光をあて価値を

これらの素材は、価値ある資源でありながら、お金をかけて処分されてきました。

朝日のあたるファームでは、杉の皮や海藻を堆肥原料として有償で仕入れる体制を整備。

生産者にとっては廃棄コストの削減につながり、朝日のあたるファームでは質の高い堆肥原料を安定して確保できる、双方にとってメリットのある循環が生まれました。

今までは、捨てられていたものが、新しい価値を持ち、畑の命を育む堆肥に生まれ変わる。

2025年春、竹チップ堆肥をまいたりんご畑

また、農林水産省が掲げる「みどりの食料システム戦略」でも、環境負荷の少ない有機肥料の活用が推奨されており、こうした地域資源を活用した取り組みが、今後ますます大切になっていくと考えられます。

就労支援として、地域内に産業の担い手を増やす

この取り組みは、産業や環境面だけではなく、福祉の視点でも大きな意味を持ちます。

利用者が、地域にとって価値のある産業に関わり、製造と販売につなげていくことは、「やりがい」と「収入」を得られる就労支援の場になっています。

朝日のあたるファームの半年間での平均工賃は約64,000円。

県内でもとても高いレベルなのだそうです。

全国平均(約24,000円)と比べても、3倍近い賃金となっています。

堆肥づくりが本格スタート

2025年10月、試験実証として岩手県の認可を得て堆肥の製造が本格的に始まりました。

今期の出荷はバーク堆肥40トン。来年度、目指す生産量はなんと100トン!

製造が増えるほど、利益につながる、とみなさんが目標を持って頑張っているのを、作業現場から感じました。

これからますます朝日のあたるファームは

産業・環境・福祉――三方がそれぞれつながりながら、よりよい循環を作り上げていきます!

このポーズは…

「堆肥の生産と販売に向けて、がんばるぞ!」という決意のポーズでした。

真剣に仕事に取り組み、目に見える成果を得られる喜びは、利用者の働く意欲にもつながっています。

次回の後編では、そんな朝日のあたるファームの利用者のみなさんの様子をご紹介します。

取材・文 板林 恵

一覧

ページのトップへ戻る