合同会社Hs farm(エイチエス ファーム)の代表、千葉勝久さん。出身地の陸前高田市で、地元の農業をもっと盛んにしたい!という想いを抱きながら、イチゴの生産と販売に奮闘している実業家です。
若い人が農業の魅力に気が付いてくれるよう、従業員と一緒に力を合わせ、地域活性化へアプローチしています。
チャンスを感じて決断した農業経営
イチゴ栽培に使っている1棟約40a(アール)のハウスは、東日本大震災の復興事業で作られたもの。
千葉さんが農業経営を決断できたのは、タイミングが良かったからだと言います。
まさか自分が農業をするなんて思ってもいなかった……と、はにかみながら話す、千葉さん。
「起業を決断したのは早かった」
独立前の千葉さんは、JAおおふなとアグリサービスでイチゴやトマトなどの栽培に従事していました。そのときの経験があったからこそ、独立を決断できたと言います。
「このタイミングで農業を始めるのはチャンスだと感じました」
2021年9月、個人事業として立ち上げた会社は、2022年11月に法人化。
仲間と一緒に始めた会社なので、まずは経営を安定させることが最優先だと語ってくれました。
5年計画に沿って、しっかりとした基盤を作り、産地化とブランド化を目指しています。
味にこだわったイチゴ作り
千葉さんが丹精込めて作っているイチゴは『紅ほっぺ』という品種で、育てやすいのが特徴だと言います。
いろいろ試した結果、安定して生産ができる『紅ほっぺ』を栽培することになりました。
「地元の環境と栽培システムに適した品種でなければ、良いイチゴが作れない」
ハウスに高設栽培システムを導入した千葉さんは、作業がしやすいだけでなく、養液(水+肥料成分)の管理がしやすい環境を整備。
水分を調整することで、甘くて品質の高い、こだわりのイチゴが収穫できたと言います。
千葉さんの『紅ほっぺ』はお客さまに好評で、地元以外の地域でも、大きく注目される存在になりました。
生産性を高めるためには人手が必要
イチゴの収穫期は12~6月ですが、収穫後の片付けや、次のシーズンに向けた定植準備など、年間を通して作業をしています。
約28,000本の苗を定植するため、親株作りから鉢上げ、選別などの作業が欠かせません。
「生産性を高めるには、やはり人手が必要」
千葉さんは、将来的に観光農園ハウスの運営も視野に入れていると言います。
今後、事業拡大するならば人手が必要だと考えていたところに、農福連携の話が舞い込みます。
農福連携は正に『win-winな関係性』
お互いにwin-winな関係なのが良い。
そう話す千葉さんは、人手不足を改善するために、農福連携をやってみよう!と考えました。
「福祉施設の利用者さんも収入を得られるし、農家の人手不足も改善できる」
施設利用者さんに農作業をしてもらうことに対して、不安はほとんどなかった。
作業に向いている人をマッチングしてくれるだけでなく、必ず一人サポートが付くので、コミュニケーションがスムーズにできたと言います。
ちゃんとできるのかな…とは思ったけど、確実に作業ができるようになったので、安心して仕事を任せられました。
利用者さんの自信にもなると思う!そう話す千葉さんは、年間スケジュールに取り入れたいと考えています。
今後の農福連携に期待すること
人手が足りないと、声をあげられない農家さんがいるのは問題。
もっと発展するためには、地域のコミュニティを活用したり情報交換したりして、定期的にヒアリングすることが大事なのでは…と話す、千葉さん。
農業のことだけでなく福祉のことも含め、みんなが良い方向に向かっていくためには、垣根を越えた協力が必要なのかもしれません。
農業の発展に向けて
千葉さんは、年配者や経験者の知識や知恵にプラスして、女性も含め若い力と連携できる農業が実現できたら面白いと話していました。
自分なりに工夫をして、農業を楽しみながら品質の高いブランドを陸前高田に作ろうとしています。
「地域に合った生育、利益が安定する農業を目指さないといけない」
物腰の柔らかい雰囲気とは対照的に、農業経営への覚悟を力強く話していた千葉さんの姿が、とても印象的でした。
取材・文:藤原喜久江