陸前高田市にある、海が見える農園での野菜の栽培や、
自家製のお米を100%使用した、ポリフリーの製造などを行う「ひころいちファーム」。
育てる野菜は、農薬などは減らし自然に近い状態で栽培をしています。
震災後には、自社農場で栽培した原料をもとに、米粉パスタを開発。
派生商品として米粉パスタスナックも誕生し、今ではひころいちファームの主力商品となっています。
人気の秘密は、グルテンフリー、アレルゲンフリー、化学調味料フリーへのこだわりです。
誰でも安心して食べられる、体にやさしい上質な商品作りを目指しています。
野菜ソムリエの資格をもつ、代表の村上一憲さん。
野菜へ対しては「野菜を作っているのではなく、野菜を育てている」という思いを大切にしているそうです。
連携先はなくてはならない存在に
ひころいちファームへ農福連携のお話がきたのは、2023年の春頃。
みらい創造財団朝日のあたる家のコーディネーターの方や、同じ農家仲間であるイドバダアップルの吉田司さんからお誘いがあったことから。
「以前、障害のある子を雇ったことがあったのですが、お互いの不安が生じてしまい、うまくいかなかったんです。
うちでは、難しいかな……と感じたのですが、
コーディネーターの方から、『施設の職員の人も一緒に入る、自分もサポートします!』ということでした。
それなら信頼できるし、このタイミングで事業も拡大できるチャンスなのではと思い、タカタアグリコンソーシアムに参加しました」
本格的に連携をスタートさせたのは、8月から。
農場での野菜の収穫は青松館、後任の作業所きらり。
工場での作業は、あすなろホームとの連携が実現しました。
農場での作業は、利用者さん2~3人に対して、施設職員1人がサポートするかたちで、
1日2時間オクラの収穫を行います。
「オクラの収穫は、なかなか難しい作業なんです。
切り口のことや大きさを間違えちゃいけなかったり、収穫の見落としもけっこうある野菜なんです。
でも、日中の暑いなか、もくもくと作業をしてくれて、頑張ってもらいましたね」
連携前の昨年は3000本だった収穫。
連携後の今年は、なんと5000本に増えたそうです。
連携をするまでは村上さん自身、毎日畑の作業に追われていました。
利用者の人たちが入ってくれたことで、収穫作業は任せて、工場での仕事にも注力できるようになったそうです。
あすなろホームとの連携は、お米を粉にひく工場での作業です。
利用者さんと施設職員の方の2名で、午前と午後で2時間半ずつ作業を行います。
「週3日、作業に入ってもらっています。以前は職員が1人、工場に入ってまわしていましたが、今はあすなろホームさんが来ないとまわせない状況になっているくらい、助かっています」
作業をする利用者さんからは、「こういう仕事がやれて良かった、嬉しい!」との声も多くあるそうです。
今後への期待を胸に
野菜の収穫でも工場での作業も、簡単な作業だからこそ続けるのが難しく、集中力が続かないということは誰しもあります。
利用者のみなさんは、きちんと理解して、作業内容を素直に受け入れてくれるので、安心して頼めると村上さんは話します。
今では、「連携の話しがあって良かった」と思うそうです。
利用者の人たちも、施設のなかだけじゃなく、工場や農場など外に出る機会が増えことで、
仕事へのやりがいや自信に繋がっていくのだと思います。
村上さんは、今までの農福連携は、農家と施設の1対1。
続けていくとお互いに疲弊してしまい、途中で終わるというイメージが強かったそうです。
「これからの農福連携は、みんなでまわして、繋がっている仕組みなので、これならうまくいくと思いますね。
農業と福祉の連携に関しては、これからも期待が高いです。
まず私の目標は、利用者さんに『今日は、ひころいちファームでの仕事だ!やったぁ!!』と思ってもらえるような場所になることです」
取材・文:吉田ルミ子