所属農家・活動紹介


北限のゆず研究会 佐々木隆志さん

ゆずが自分の世界を広げてくれた


古くから陸前高田市のゆずは、家庭の庭先などに自生しており、自家消費されるのみで市場に出回るものではありませんでした。
このゆずを活用し、まちに笑顔希望をつくりたいと「北限のゆず研究会」は震災後の2013年6月に設立されました。
設立から10周年を迎えた北限のゆず研究会、会長の佐々木隆志(ささきたかし)さんに、
会長として、また佐々木さん個人としての想いを伺いました。

多くの支えをいただきながらやってきた

陸前高田市のゆずに着目したのは、岩手県二戸市にある蔵元、株式会社南部美人の久慈浩介(くじこうすけ)社長でした。
震災の前の年から陸前高田のゆずを使用した商品開発を検討していましたが、そのタイミングで震災が起こりました。

「震災があり、商品開発を一時はあきらめかけたのですが、
今こそゆずをつかって地域を元気にしたいという想いから、南部美人さんの商品用にゆずを収穫することになったんです」

ゆずの木のある家庭には高齢者が多く、高さ3〜4メートルのところで実ったゆずをとるのは難しいため、ゆず狩りサポーターを募りました。
約350キロのゆずを収穫し「ゆず酒」がつくられました。市内限定で発売され、2ヶ月で完売。
陸前高田のゆずにはさらなる可能性があると確信し、北限のゆず研究会の活動がスタートしました。

「ゆずの園地や生産者を増やし、のべ1000人以上のゆず狩りサポーターに収穫のお手伝いをしてもらいました。
設立当時は戦略も展望もなく、毎年その場その場、目の前の対応で精一杯でした。
大変なことばかりでしたが、行政や企業、地域の人たちの応援のおかげで、ここまで来ることができました。
本当にありがたいですね」

「生産」も「地域の文化」としても、ゆずを大切にしたい

佐々木さんは、収穫量の安定や運営基盤の強化など、未だに取り組むべき課題は多いと話します。

「やっと数年先の計画を立てることができ、事業の長期的な見通しが見えてきました。
苗木の植樹本数や、それが実ったときの収穫量も具体的に分かってきました。
オリジナル商品の開発にも取り組んでいます。
また生産だけではなく、地域の文化として、私たちの活動の原点でもある自生するゆずを守ることも大切にしていきたいですね」

佐々木さんはさまざまな課題に直面しながらも、それを一つずつクリアしていく過程を楽しみながら活動を続けています。

北限のゆずを使ったお弁当を食べる「園地でランチ」企画も開催しました
ゆずと出会って、これだけ夢中になれた

佐々木さん個人としての想いも伺いました。

「大げさに言えば、佐々木隆志としての生き方を見つけたような気がしています。
ただ農家として生きるよりも、ゆずとのかかわりを通じた多くの出会いがあって、どれだけ力を注ぎ込めるかー。
ゆずはそんな感覚に出会わせてくれました。
自分がなぜ農業をしてきたのか、なぜ生きてるんだとか……。
人生の集大成をつくってくれたと思っています。
多くの人とのかかわりや、つながりで続いてきた研究会です。
数年先の見通しも見えてきたので、この先もきっとやっていけるだろうって、頑張れるんですよ。
だからね、やれるところまでまずはやってみよう、なんて思っています。
使命のようなものを感じていますね。」

「あ、でも、実際の私はそんなに立派な人間じゃないから!」と佐々木さんは笑います。
佐々木さんの言葉から、使命と覚悟が伝わってきました。

挑戦のなかには、課題があって当たり前。
そのなかで自分がやるべきことを一つずつクリアしていきたい。
そんな言葉が印象的でした。
北限のゆずには、まちや人を育て、さらに産業や文化を育てる力があるのだと、大きな力を感じました。

取材・文:板林恵

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