休眠預金活用事業



農福連携進捗


TAC市議説明会

タカタアグリコンソーシアムさらなる一歩を踏み出す~陸前高田市議説明会開催~


2月15日、(一財)みらい創造財団朝日のあたる家(以下、朝日のあたる家)で陸前高田市議を対象とした、「農福連携を軸とした農業振興に関わる説明会」が開催されました。

参加者は、市議の方6名(うち1名はオンラインでの参加)と陸前高田市役所職員が1名。

発表者は、タカタアグリコンソーシアムのメンバーの「イドバダ・アップル」の吉田司さん、「ファーム小金山」の小金山忍さん、朝日のあたる家事務局次長の鈴木拓さんです。

想いをのせて伝える

はじめに鈴木さんからのご挨拶に続いて、吉田さんから「設立趣旨と概要」についてお話しがありました。

開口一番、吉田さんから

「みなさん、スター農家ってご存知でしょうか?」との投げかけが。

売り上げが3000万を超えて、さらにのびしろのある農家さんのことを指します。スター農家といわれる人は、日本全国の農家さんを合わせて、わずか1.8パーセントほどしかいないそうです。残念ながら現在、陸前高田市にはスター農家といわれる方々は見当たらない状況だと、吉田さんは話します。

「スター農家はいませんが、陸前高田には震災前には考えなれなかった農作物を生み出して、世に出している新進気鋭の農家さんがいます!!この方たちを集めて、売り上げ3000万以上で申請したらどうなるの!?ということをやってみました。その結果……。約60団体の公募があったうち、6団体に残りました。複数の農家を束ねて申請をして、その事業内容が通ったのは、ここ陸前高田だけなんです」

司さんの熱が入ったトークに、吸い込まれるようにみなさん聞き入っていました。

次に、鈴木さんからは、「農福連携の取り組みと実績」について説明が行われ、はじめに朝日のあたる家が何をやっているのか?と農福連携についてのお話しがありました。

「朝日のあたる家は、様々な福祉文脈のところをワンストップで繋ぎ、そのなかで生まれた連携を広報で発信していきます。この事業は、休眠預金の活用事業の採択をえて、行われています。過疎化の地域でもチームを組んでやることで、農福連携の推進で産業を支えていこう!という、『田舎のロールモデルをやってやるぞ』という想いで進めています」

陸前高田の農家さんのほとんどは、小規模で行っていることが多いため、生産量は上げたいが、労働力は確保できない。また、年間の雇用は難しく、繁忙時期だけ人手がほしい。それに加えて、農家さんの高齢化も進んでいます。

福祉施設では、ここ3年続いているコロナ禍の影響で、受託する仕事が減少してきている。

農作業による就労体験の機会の需要はあるが、地域の農家さんや、地域産業と繋がるような共同が今まで組めていなかったような状況でした。

現状、いいものを生み出しているけど、人手が足りていない農家さん。仕事が減少傾向にある福祉施設。双方の課題をお互いが補うようなかたちとして誕生したのが、「農福連携」なのです。

連携することでつなげる、農福のコーディネートは、応募する前から取り組んでいました。

今回、「タカタアグリコンソーシアム」というひとつのチームを組んだことで、年間を通してチームで仕事が出せるという利点があると鈴木さんは話します。

実際に受け入れを行っている農家さんの代表として、「ファーム小金山」の小金山さんが、所感を話されました。

「連携前は、人手が足りていない状態でした。毎日夜中まで作業を行っていましたが、連携をしてから、残業がなくなりました。連携をして最初の頃は、作業についていろいろと試行錯誤をしないとうまくいかなかったです。ただ、誰がどの作業が向いているか、分かるようになるとその人に任せることができるので、とても楽になりました。自分自身も他の作業が行えて、次年度に向けて考える時間も増えました。今は、農福連携がないとあり得ないと思っていますし、自分一人では今の結果には繋がっていないなと思っています」

連携の話を聞いて「ぜひ加入したい!」と、2023年11月から新メンバーとして「仙果園」が加入しました。連携の輪は確実に広がっています。

「農福連携」これからの可能性は

菅野秀一郎さんは、「私の娘も支援学校に通っていて、就労体験もしています。現在、一般就労で職場を探している状態です。時給の最低賃金はたしかに他より高いですが、就労支援の子は長い時間働けないんですね。親としては、私たちがいなくなったときに、ちゃんと生活ができていけるのかという、踏み込んだところまで気になるところです。でも、こういう連携があるということは、いろんな農家さんと繋がっていけるので、間に入ってくれる朝日のあたる家があって、ずっとこういうことをやってくれるのであれば、親としてはありがたいですね。自分は利用する側として、紹介をしたり繋げていきたいなという想いでずっと聞いていました」

鈴木さん「地域社会支えになろうよ!施設だけで働くのではなく、手と手とを取り合って、お互いあてにし合って地域社会をつくりたいという想いを汲んでやっています。ぜひ、これからも応援いただけるとありがたいです」

鵜浦昌也さんからは、吉田さんへ「タカタアグリコンソーシアムの組織として、今後も農福連携をすすめながら、農家やリンゴ農家を増やしていきたい。という気持ちはありますか?」という質問がありました。

吉田さん「まずは、きちんとルールをつくることが大事だと思っています。最初から、なんでも受け入れてしまうと、ルールも曖昧になってしまうので、増やしたい気持ちはありますが、ルールの基盤をきちんとつくってからじゃないと、農家さんに対して、希望をもたせて入れたはいいが、裏切ってしまう結果になると思っています。リンゴ農家に関しても増やしたい気持ちはありますが、様々なリスクもある。まずは、コンソーシアムのメンバーが力をつけて、頼れる存在になることが目標です」

説明会終了後の感想を伺いました。

大和田加代子さんは「農家さんの高齢化問題では、作物は自分で作れるけど、産直まで持っていく人がいないという声をよく聞きます。このような課題が解決できるような事業所が一つあったらいいなと思っていました。今回の説明会を聞いて、『こんな形があるんだ!なるほど!!』と思いました。年間仕事があるというところが大事ですね。必要なときだけ、必要な人だけっていうのは、かっこいいことだけど、働く側からしたら辛いですよね。障がいのある人にもちゃんと仕事が届くのはいいと思いました。農業の一番の課題は、後継者がいないこと。ここもフォローできるような体制にまでもっていってもらえたらありがたいですね」

中野貴徳さんからは「今日のテーマだけでいうと、補助金をとりにいかないと成り立たないような印象を少し受けました。補助金ありきでスタートできるという状態では、どんなにすばらしい理念を掲げても、商売としては成り立っていかないのでは……と感じた部分はあります。一般的な事業として考えると、私はある程度の投資は必要だと思いますので。でも、今ある仕組みを最大限活用してやっていくことは、それはそれで正しい選択だとは思っていますよ。ただ、気持ちの上では、そういう気持ちは忘れないでほしいなと思いますね」

農家や福祉に関すること、将来的なビジョンなど、様々な質問や意見が飛び交うなか、厳しい意見もいただいたことで、タカタアグリコンソーシアムは、今後のさらなる飛躍に向けてより結束が強くなったように感じます。

取材・文 吉田ルミ子

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