農福連携進捗


米崎りんご農家つなぎ・ファーム小金山✕粉砕機の使用

未来につなぐ資源と笑顔の「循環」


陸前高田には、りんご、ぶどう、ゆずなどを生産する農家が多くあります。これらのような果実が実る木を持つ農家では収穫が終わる秋から、新しいシーズンが始まる春までに「剪定」と呼ばれる作業が不可欠です。剪定とは、不要な枝葉を切り落とし樹木の形を整えることで、良い状態で果実を実らせるために行われる作業です。

しかし、この作業は農家にとって「見えない重労働」となっています。

切り落とされた大量の枝を一か所に集める労力がかかります。さらに焼却処分も必要で、葉が付いている場合は飛び火の危険もあるため見守りが必要です。

粉砕機の導入で農家の負担軽減を

この困りごとにアプローチするため、2023年には「剪定枝集めの仕事のみ」を福祉団体と連携して取り組みましたが、根本的な問題である枝処分の解決には至りませんでした。

そこで2024年、朝日のあたる家の連携事業コーディネーター、鈴木さんの「今まで〝動かせなかった歯車〟を回せたら!」という想いから導入されたのが、粉砕機です。

枝の粉砕後。一瞬でチップやパウダー状に

これまでにりんご、ぶどう、竹、椿の枝の粉砕作業を行いました。今後の展開を見据え、りんご農家で、所要作業時間や流れを知るための実証をすることになりました。

現場実証、スタートです!

ここは、陸前高田市内のりんご農家「つなぎ」の海の見えるりんご畑です。つなぎは4つの園地を持ち、この畑には220本ほどのりんごの木があるため、剪定する枝も多くなります。

粉砕作業に協力するのは、ピーマン農家のファーム小金山さん。

枝を次々と粉砕機に入れ、なんと1日がかりで粉砕した量は、フレコンバッグ5つ分、約500キログラムとなりました!

この後、粉砕したチップはファーム小金山の畑に運ばれ、りんごの搾りかすやクラフトビールのモルトかす、規格外で廃棄される野菜や果樹と混ぜ合わされて有機肥料に作り変えられ、そしてピーマン栽培に活用されるのだそう。

小金山さんは 「以前、水田だった畑は有機物が不足しているので、肥料として使ってみたら土壌の質も良くなりました。雑草対策としても活用しています」と資源の循環を実感しています。

「つなぎ」代表の村上さんは

「今回は実証のため、枝を片付けてもらえると聞きお願いしました。集めて燃やす作業はやっぱり大変なので、お願いしてよかったです」と話し、

つなぎのスタッフ、菅原さんは

「この枝が片付いたら、りんごの花が咲くまで仕事がオフ!」と嬉しそうに話します。

枝を集めるつなぎの〝隊長〟こと村上さん

つくりたいのは農と人の循環

朝日のあたる家の鈴木さんによると、 剪定作業の農福連携は、福祉側の就労支援として、単純作業となる枝集めを行い、朝日のあたる家側が粉砕し、チップ化したものを別の農園に集配する計画を進めています。

コーディネーターの鈴木さんも作業に入ります

粉砕機を導入したことについて鈴木さんは

「今まで1〜2週間かかっていた枝の処分作業が、今は半日から1日で完了するようになりました。農家さんは他のことに従事したり、休みに入ったり時間をつくることができる。 『次の事業に取りかかろう』とか『開花するまでオフ。休暇が増えて嬉しい』という喜びの声をいただくようになりました」と話し、

「切り落とした枝も無駄にしないで、有機肥料に作り変えて畑に還して、新しい農産物を育てるのに役立てていく。そんな、人や農業資源の循環を作ることで、農家さんの笑顔の循環も作っていくのが、我々の役目だと思っています。

この地域にあるモノや人、すべてが循環する。それを今後も発信していきます!」と想いは熱いです。

動き出した粉砕機。

今後の展開を、楽しみにしていてください!

取材・文 板林恵

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