TAC（タカタアグリコンソーシアム）メンバーの吉田宏さんが営む米崎りんご直売所「仙果園」。ご存じの方も多くいらっしゃると思いますが、2024年4月末、直売休止時期（2月～9月）を利活用し、「米粉たい焼き」を再販売するという情報が飛び込みました。

注目するのは「米粉100％」という点。グルテンフリーで小麦アレルギーをもつ方にとっても、安心安全な美味しいおやつになりそうです。

そして、この米粉は同じくTACメンバーである「ひころいちファーム」の提供によるもので、メンバー同士のつながりで生まれた商品でもあります。

米粉たい焼きを食べた方からの感想は、

・米粉だからなのか、おこげのような風味が食欲をそそる。

・生地がしっとりで、お腹のもちも良さそう。

・餡がしっぽまでびっしりと入っているのも大満足です！

と絶賛でした。

地元の食材にこだわった「米粉たい焼き」

「震災前（旧リプル内フードコート）から、たい焼きを売っていたんですよ。そのときは、米粉と小麦粉は半々の割合でした。震災後から3か月後に再建した店舗でも続けて売っていたんです。その後、一旦（販売を）休んではいましたが復活することに決めました。」

未曽有の大災害「東日本大震災」で店舗を失った吉田さんは一念発起し、わずか3か月後には今の場所（米崎町）で「食堂カフェ仙華園」を再建しました。地元を含め岩手県産の食材を使った温かい料理の提供は、絶望的な状況の中で１つの光が差したことでしょう。地域の方はもちろん生産者にとっても、心癒される頼りになる場所だったに違いありません。

吉田さんにお客様からの反響を聞くと、

「4月からのスタートで温かい時期になってきていたので売れ行きが心配でしたが、予想より多くの方に来ていただきました。年齢層も幅広くて、昼食を食べた後に買って帰る人もいますし、食堂の方でもメニューとして注文できるので、デザートとしてお出しすることもあります。食後でもぺろりと平らげていらっしゃいますよ。」

米粉100％にこだわったのは、食の安全性や健康への配慮。小麦アレルギーの方が安心して食べられるようにと、米粉たい焼きの中の餡（あん）も含めて「グルテンフリー」に。しかも添加物は一切使用していないのだそう。

特に米粉は小麦粉と比べて水分を多く取りこむので、もちもちの食感でボリューム感があり腹持ちが良いとされます。また、米粉には人間の体内で生成できない必須アミノ酸がより多く含まれています。その他にも、ビタミンB1やビタミンEなどが含まれ栄養価が高い食品とされています。おやつはもちろんのこと、忙しい朝食としても手軽に食べられそうですね。

TAC連携で地元を盛り上げたい

吉田さんが手がける商品は、どれも「地産地消」にこだわりをもっています。「ひころいちファーム」とのつながりもその一つ。また「仙菓園」では季節限定で苺クレープも販売しており、苺もTACメンバーである「HSファーム」から仕入れているのだそうです。

「TACメンバーには昔から付き合いがある仲間もいますし、とにかく情報交流が盛んですね。農家さん同士のつながりが、より深められると思います。」

そう話しながら微笑む吉田さんは、地元を盛り上げたいという想いに満ち溢れていました。地元の農作物をできるだけ使用している料理も、農家とのつながりを重んじていることも、地域の方々へ美味しい料理を提供するのも、「陸前高田への愛」を感じずにはいられません。

また、他にも苺ジャムやドライフルーツなどの加工品も手掛けており、道の駅や楽天通販・ふるさと納税など、あらゆる販売方法で地元を盛り上げる立役者でもあります。近々、仙台の老舗百貨店での販売も決まっているそうです。

吉田さんのオリジナル商品への情熱

「米粉たい焼き」を取材した6月は、3種類の餡（小豆・クリーム各150円と季節限定のずんだあん200円）で販売中。

今後は季節ごとに、「あん」の種類が増えていく予定なのだそう。手塩にかけて育てた農作物とのコラボ商品も生まれそうな予感です。

「今後は食事としても喜んでもらえるような米粉たい焼きを試案中です。できればクレープの店舗『仙菓園』に移設して、1年中販売したいと考えています。まだまだ始めたばかりなので多くの人に食べてもらい、お客様に喜んでもらえたらなと思います。」 これからもTACメンバーのつながりを通し、吉田さんのオリジナル商品が開発されていき、魅力ある商品の販路が拡大していくことで、ますます生産者の収益アップにも期待が膨らみそうです。吉田さんの瞳の奥には、地域を想う情熱がきらりと輝いていました。

取材・文　戸羽美智子