
ファームを支える、一人ひとりの想い
2025年4月1日に開所した就労継続支援B型事業所「朝日のあたるファーム」。
前編では立ち上げの背景やビジョンをお届けしましたが、後編では、現場を支えるスタッフたちの声を紹介します。
全体統括の鈴木さんが「最高のメンバー」と話す、スタッフみなさんのそれぞれの想いを伺いました。
「この歳でワクワクできるって、最高です!」──千葉祐子さん(生活支援員・相談支援員)
この春、朝日のあたるファームの一員となり、新たなスタートを切った千葉祐子さん。

福祉の現場で長年経験を積み、昨年には社会福祉士の資格も取得。「朝日のあたるファームで働きたい」という強い想いから、自ら扉を叩いたといいます。
前職の社会福祉協議会では就労準備支援に携わり、実習先などで朝日のあたる家と関わる機会もありました。
「農福連携の取り組みに興味があって、就労への向き合い方や姿勢を見て、『ここで一緒に働けたら楽しいだろうな』と思っていたんです。昨年、社会福祉士の資格を取ったことを、鈴木さんに猛アピールしたんです。『では一緒に働きましょうか』と(笑)」
念願が叶い、ファーム開設のタイミングでの入職が決まりました。
「今、本当に毎日が楽しいんです。この歳になってワクワクできるなんて、最高ですね。若い人たちに混ざって、57歳のおばちゃんがチャレンジしてもいいかなって(笑)」
誰かの頑張りを応援することが好きで、おせっかいな性格が就労支援に合っているなって感じているそう。そして、農業も大好き。
「利用者さんと一緒に種をまいて、育てて、収穫して、一緒に料理して『美味しいね』って食事する。それが今からとても楽しみです」
これまでの経験を活かしながら、スタッフや利用者さんと一緒にワクワクできる場所を作っていきたいと目を輝かせます。
一緒に汗を流す存在でありたい──地野一真さん(職業指導員)
2024年8月から朝日のあたる家の一員となった地野一真さん。
この春からは朝日のあたるファームの職業指導員となりました。
農家さんの作業に携わったり、人手が足りない現場をサポートしたり、地域の中で〝手を動かす〟日々を送っています。
「農作業を通じて、人と地域がつながっていく感覚が面白いですね」と話します。

職業指導員という立場については、こう語ります。
「特別な指導というより、一緒に作業をしながら『こうするとやりやすいですよ』と自然に伝えられたら。現場の〝勝手〟は分かっているつもりなので、それを共有していけたらと思っています」
地域の人と一緒に何かをしたり、利用者と一緒に働く人。
そんな雰囲気が自分に合っていると感じているそうです。
かつて自身も、働きにくさを抱え、支援を受ける立場にあったといいます。だからこそ、利用者の近くで寄り添える存在でもあります。
「これから、社会福祉協議会で関わってきた方が、利用者として通ってくる予定です。また一緒に働けることが本当にうれしいし、楽しみです。ファームでの経験が、利用者の新しい一歩につながってほしい」と、話してくれました。
その思いを胸に今日も現場に立つ地野さんの姿は、就労にむけ歩む利用者の道しるべになる気がしました。
「支援計画をつくるからこそ、現場主義」──古藤瑠那さん(管理者兼サービス管理責任者)
2024年8月に、朝日のあたる家で働き始めて半年。
「初日は草刈りでバテました」と笑う古藤さんも、今では外仕事にもすっかり慣れ、日々の変化を楽しみながら働いています。

これまでは児童の分野でサービス管理責任者として働いた経験がありますが、就労支援の管理者となるのは今回が初めて。利用者一人ひとりに合わせた個別支援計画の作成を担当しています。
「昨日も新しく契約があり、若い世代の方が来てくれました。これまで生きづらさを抱えていたようですが、とても前向きで『頑張ります!』と笑顔を見せてくれて、うれしかったですね。ここで少しずつ力をつけて、いずれ本人の望むかたちで働けるようになってほしいですね」と、優しい表情で語ります。
支援計画をつくる立場だからこそ、現場に出ることも大切にしています。
「一緒に作業をしないと見えないこともあります。近くで様子を見ながら、自然に声をかけたり、必要な支援の方向性をつかめたらいいなと思います」
日々のちょっとした変化や反応に目を向け、職員同士で共有しながら支援につなげていくことを大切にしているそうです。
「目標に向けて、どんな小さなステップを積み重ねていくか。それは人によって違いますし、無理のないペースでその人らしく、がいちばんですね」
安心して一歩を踏み出せるように。
古藤さんが、利用者の就労をしっかり後押ししてくれるでしょう。
「さまざまな就労経験が、今すべて生きている」──佐々木裕太さん(職業指導員)
「大きな階段じゃなくていい。小さな階段を一段ずつ、踏み外さずに。
ときには2歩進んで1歩下がっても、自分のペースで前に進めたらそれでいい。そう思っています」
そう語る、職業指導員の佐々木さん。
これまでに大工の見習い、林業、土木、福祉など、さまざまな職を経験してきました。

〝職を転々とした〟ことに、ネガティブな思いもありましたが、最近その見え方が変わってきたそうです。
「いま振り返ると、無駄な経験は一つもなかったと思います。どの仕事でも得たことが今につながっていて、それらが利用者さんの支援に役立っていると感じています。『ひとつの道を極めなくても、あとで全部つながる』って、自分自身が証明できているんじゃないかな」
実際に、昨年度大好評だった「竹細工ワークショップ」も、佐々木さんが多様な職で培ってきたものを生かしたことで、大成功につながりました。
だからこそ、これから一歩を踏み出す利用者のみなさんに、こんな想いを伝えたいそうです。
「まっすぐじゃなくても大丈夫。これまでの自分の経験が、いつかどこかで誰かの役に立つときが来る。ちゃんと後からつながってくるよって」
これまで歩んできた道がまっすぐでなくても、それを否定せずに受け入れる。
その姿勢が、新たな一歩を踏み出そうとする方にも、少しずつ根づいていくのではないでしょうか。
誰もが地域を支える一員である
朝日のあたるファームには、地域とのつながり、安定した仕事と工賃、そして職員一人ひとりの魅力と熱い思いがあります。
地域の産業や農業に関わると実感するのは「自分も地域を支える一員だ」ということです。

今、まさに〝畑を耕しはじめた〟ところ。
この畑に、きっと大きな果実が実る――。
そんな希望を胸に、みんなで一歩ずつ新しい未来を拓いていきます。
取材・文 板林恵
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