2025年4月に開所した「朝日のあたるファーム」は、この秋で半年を迎えました。 農福連携や地域資源を活かした堆肥づくりなど、多様な仕事に触れるなかで、利用者たちは働くことの喜びを見出しています。
かつて「働きたいけれど、思うように働けない」と感じていた人も、今では「体力がついてきた」「週5日働くという目標が叶った」と、前向きに仕事を楽しんでいます。
湖風に吹かれながら〝ワンチーム〟で作業

この日、作業に訪れたのは陸前高田市米崎町のりんご農家「イドバダ・アップル」さんの畑。眼下に広がる海、爽やかな秋風を感じるこの畑で、特産品「米崎りんご」が収穫の時を迎えていました。
朝日のあたるファームからは、12名の利用者が参加し
・葉摘み・玉回し
・収穫
と、二手に分かれて作業しました。

この日収穫するりんごは、10月末の「陸前高田市 産業まつり」に出品されるもの。
「産業まつりに出すものだ」という意識なのでしょうか。
みなさんテキパキと手を動かしています。
このおかげで、吉田さんは収穫されたりんごの選別作業のみに集中できるので、効率よく収穫が進んでいきます。

選別している吉田さんのもとに、収穫されたりんごが次々に運ばれてきます。
「みんな、速いなあ!」と吉田さんも驚くほど。
本来、ひとりで収穫すると1週間かかる仕事量も、チームで動くと1日で終わるのだそうです。吉田さんは「職業指導員が利用者さんをサポートしているから、収穫を安心して任せられる」と話します。
信頼できるチームとして一丸となり、収穫をしているのが印象的でした。
【できるの芽】少しずつ、着実にのびる力
りんごの収穫が初めてと話す利用者さんに、今日の仕事について伺いました。
「最初は『りんごの軸を残して収穫する』っていうのが難しくて。でも、指導員の裕太さんが軸を残して採るコツを教えてくれて。だんだんできるようになりました」と話してくれました。

一方、作業に慣れている方は、手際よく収穫していきます。

分からないことがあれば指導員に確認しながら、それぞれが自分のペースで働いています。
【からだの芽】働くことで健康的に
作業指導員の千葉さんと利用者たちが10時の休憩中に「最近どんなものを食べている?」そんな談笑をしていました。
千葉さんに伺うと、
「前はファストフードやコンビニが大好きだった人も、最近は健康志向になっているんですよ。『納豆を毎日食べているよ』と報告してくれるんです。食事を整えたら、体重も落ちて、身体が軽くなったって言っていましたね」
日々の食生活を見直すことで、仕事への意欲も確実に増しているようです。

【こころの芽】はなしたくなる「働く喜び」
イドバダ・アップルの吉田さんには、この半年間の農福連携について伺いました。
「すごく印象に残っていることがあって。
ある利用者さんが『家に帰ってから、りんご畑で働いた話を家族にしているよ』って教えてくれました。でも実は、それまでは家族とほとんど会話がなかったんだって……。その話を聞いて、思わず泣きそうになっちゃって」
そして、りんごの生産に大きな意義を感じるように。

「朝日のあたるファームは、利用者さんにしっかりと賃金を出していると聞いて、自分の仕事が〝地域の産業〟をつくっているんだなって。だからこそ、僕自身が〝スター農家〟になって稼いでいきたい、と改めて感じています。
スター農家になることで、この素晴らしい農福連携という取り組みを全国的に知ってもらいたいですね」
産業をつくることは、吉田さんにとっての「誇り」になっています。
一次産業があるからこそ、加工や流通、販売など次の産業とつながっていく――。
産業の始まりを、ここで支えているのです。

「ひとつひとつ」に手をかけて、大きな実りに
朝日のあたるファームがはじまって、半年。
一つひとつの、りんごが手をかけられて実を結ぶように、一人ひとりに丁寧に関わることで、自分らしい働き方という〝実り〟を手にしていく。
利用者の仕事をする力はもちろん、心や健康の面でも少しずつ成長できる場所が朝日のあたるファームです。
この場所から育つ、「人」と「産業」の芽を、これからも応援してください!

取材・文 板林 恵