農福連携進捗


仙果園×大船渡市社会福祉協議会

高品質のりんごを守った農福連携


陸前高田市で「センカエン」という単語を、知らない方はいないのではないでしょうか。

 

明治14年開園の老舗りんご農園の運営、販売の他、りんごを使用した商品開発、飲食店の経営も行っている凄腕経営者、吉田さん。

(果樹園の運営の場合「仙果園」と表記し、飲食店の店名は「仙華園」と表記されます)

陸前高田市の秋、冬の名物といえば「米崎りんご」。

今回はこの美味しいりんごの収穫現場にお邪魔し、お話を伺いました。

いざ畑へ

思わず目を細めてしまう日差しの強さが印象的な秋晴れ。この日、大船渡市社会福祉協議会の「就労準備支援事業」参加者さんは、仙果園のりんご畑でお仕事をしていました。吉田さんが管理している4つの畑は、全部合わせておよそ3.4ヘクタールにも及びます。

 

りんご畑での作業は時期に合わせて様々ありますが、この日に行った作業は大きく分けて2つあります。まずは、りんごの収穫作業。収穫されたりんごは選果機を使用して仕分けしていきます。ケースに入ったりんごは、およそ15キロ程度。それが何ケースもあり、運ぶだけでもかなりの重労働です。

この連携を行うまでは、吉田さんのご両親や、ご年配の従業員の方が作業を行っていました。

栽培を担うのは吉田さんのお父さん。体の調子が悪くなってきていて全盛期のように作業に手が回らず、このままりんごの品質を守っていけるのか、不安に感じていたそうです。この困りごとを知り合いに相談したところ紹介をしてもらったのが、高田アグリコンソーシアムで行っている「農福連携」でした。

「今年の10月から参加者さんが手伝いに来てくれるようになり、作業効率は一気に上がりました。葉摘み作業(※1)なんかは通常最低3日はかかるのですが、若い方々も多かったので1日で終わったんですよ!」

(※1:りんごの色を赤くするために周りの葉を摘み取る作業)

連携前と後での変化をお話をする吉田さんの表情が、ぱっと明るくなりました。

「今日は、収穫作業と選果作業を行っていただいておりますが、選果の機械や、運搬機も既に参加者さんだけで使いこなして作業をしてくれています。私自身も参加者さんへの声がけは意識していますが、鈴木さんがいるのでなおさら安心できますね」

こんな自分になりたい……夢へのサポート

この就労準備支援に通う方の特性として、人間関係に不安を抱えている方が非常に多く、その原因は多岐に渡ります。この背景について、就労準備支援担当の千葉さんにお話を伺いました。

「私は、生活困窮者自立支援事業の就労準備支援を担当しています。この支援事業に登録している方自体は今年度38名いるのですが、実際にこのような就労体験に参加している人数は、大体14名程度ですね。年齢層も幅広く、下は20歳から上は70代の方までいらっしゃいます。就労準備という事業名ですが、就労まではいかずとも、社会との関わりを持ちたい方や、自己実現のため参加している方もいます。ここに通っている方は、心の病を抱えている方、発達障がいと診断を受けている方も参加していますが、生きづらさを抱えながら社会とうまく接点が持てない方……など、たくさんの方がいらっしゃいます。自らの力でお金を稼ぐこと、社会への貢献を肌で感じられることなど、参加者さんにとってもメリットは多く、皆さんの顔はイキイキしていますね」

 

 「直接的に聞いたことはないけれど、何か欲しい物を買うのかな?」と千葉さんは微笑みました。

おわりに

【仙果園 吉田さん】

「今までも、福祉施設の方とともに作業をしていた経験はありました。ですが、きちんと農福連携として作業をすることで、コーディネーターさんが、利用者さんのことを細かく見ていただいているので安心して別の仕事に取り組むことが出来ています。私が畑にずっといることが出来ればいいのですが、そういうわけにはいきません。りんご作りに関わる沢山の作業を体験して、一年を通じてお手伝いをしていただけるとすごく助かりますね。この地域の農業は、かなり高齢化が進んでいますのでどんどん連携が広がっていって欲しいと思います」

【大船渡市社会福祉協議会 千葉さん】

「ここに通う方の多くは、自分がこの先何をしていきたいのかを見つけられてない方達です。ここでの就労体験を通じて、自分の将来像をイメージできるようになって欲しいですね。実際に連携をしてみて、コーディネーターの鈴木さんが、新しいお仕事を紹介してくださって非常にありがたいです。これからは、地域の事業者の皆さまにもよりご理解をいただいて、今以上に就労体験が可能な場を提供していただきたいです」

農福連携を通じて、今まで以上に沢山の方の心がこのりんご一つ一つに込められています。皆さんも、りんごを一口頬張るとき、この連携を思い出してみてください。

取材・文 垣内亜美

- 作業日数 8日間
- 総作業時間 38,5時間
- 参加延べ人数 44名
- 委託費合計 145,125円
- 生産収穫量 ペース参考:2時間でコンテナ40ケース収穫

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