2023年夏、陸前高田市で新しいコラボレーションが実現しました。
今年から本格的に全国で栽培がスタートし、話題になった赤いスイートコーン「大和ルージュ」と、地元のものを使ってお菓子を作り販売している「おかし工房木村屋」がタッグを組み、挑んだスイーツ。
どんなものができたか、お話を伺いました。
若手たちの挑戦
大和ルージュを生産しているのは、新進気鋭の若手農家「Farm Koganeyama」の小金山忍さん。
元々自分が作ったものを出荷するだけでなく、色んな人に届けたいと思っていたという小金山さん。収穫量の3分の1も出てしまう規格外の大和ルージュをスイーツに利用したいと考えていたところ、農福連携のコーディネーターから陸前高田の老舗「おかし工房木村屋」の二代目、木村洋平さんを紹介してもらいました。
「スイーツはどうしてもフルーツを使って新展開を考えてしまうもの。小金山さんの提案がなかったらスイートコーンでスイーツという発想はなかったですね。不安よりも色々やってみようと思いました。」と話す木村さん。
どういったものに使えるか、試作がスタートしました。
お店に並ぶ赤い宝石たち
第一弾は木村屋でも人気のラインナップ、パウンドケーキ。
ビジュアルのアクセントにもなっている、生地に練りこまれた赤い粒。食べるとプチっと、おもしろい食感です。
紅麹を使って生地を赤くしたり、コーンパウダーを使って味を濃厚にしたり、様々なパターンで試作を重ねたそう。コーンの風味を出すのに試行錯誤しましたが、最終的には大和ルージュの素材そのものをしっかり生かした商品になりました。
現在レギュラー展開されているパウンドケーキ。木村さんが店頭に立っていると、リピートして買う方やまとめて買う方が多くいらっしゃると感じているそうです。
見た目のインパクトでは負けていないのが「大和ルージュプリン」です。
赤いゼリーと大和ルージュがプリンの上に乗り、その華やかさは大和ルージュそのもの。まるで宝石のようです。
最初の試作では、色がうまく出ずに灰色になったり、豆腐のような味になってしまったそう。プリンの概念にとらわれず、みたらしをかけてみたりと試行錯誤を重ねました。
やはり大和ルージュの一番のチャームポイントは「赤」だというところに行きついた木村さん。「ヒゲをゆでると赤色がよく出る」と小金山さんから聞き、やってみたところ赤がきれいに発色し、ゼリーに使用しました。
プリンは季節限定商品のため今はお目にかかれませんが、ショーケースに並んでいたときはスタンダードなカスタードプリンと同じくらいのヒット商品だったそうです。
ひらめきを掛け合わせ、大きなパワーに
今年デビューしたばかりの大和ルージュ。「来年はライバル農家さんが出てくる。今、木村さんとざっくばらんに話せる関係ができたのは、これからにもつながる大きな事でした。」と話す小金山さん。
木村屋は今年秋、ベーグルとジェラートをメイン商品とした2号店「夢の樹マルシェ」をオープンさせました。「今後夢の樹マルシェで展開している商品にも活用していきたいと思っています。アイディアはいろいろありますね。」と木村さんは話します。
農家×スイーツ。地元の魅力を掛け合わせた宝石たちは、まだまだ新しい展開が期待できそう。若手のひらめきのパワーが、この街に笑顔を増やしていきます。
取材・文 熊谷蘭子