「ほっとカフェ&ふれあい座談会」は障がいのある人もない人も分け隔てなく集まり、コーヒーの香りとともにリラックスした空間で交流ができる、朝日のあたる家の人気企画の一つです。
ほっとカフェは陸前高田市から障害者理解促進事業を受託する「相談支援事業所さんさん」と会場である朝日のあたる家が主催。「就労継続支援事業所 あすなろホーム」の利用者である熊谷正弘さんが、来館された方にコーヒーをふるまいます。 2015年から年に3回、これまでに25回開催されています。
語り合ったり、ミニコンサートも
2024年2月10日のカフェには、過去最多となる40人以上の参加者が訪れました。大きな窓から差し込む暖かい日差しもたっぷりで、会場はぽっかぽかです。熊谷さんが丁寧に淹れたドリップコーヒーを可愛らしいコースターに乗せ、一人ひとりに手渡すたび、みんなが笑顔になっていきます。
地域のバンドグループ「雷神バンド」や陸前高田市で就労者支援をおこなう「スナフキンアンサンブル(旧ユニバーサル就労支援センター)」
のバンドサークルによるミニライブもあり、まるでコンサート会場のよう。おかわり自由のコーヒーや差し入れのおやつ、ミニライブなどがあり参加者の笑顔が絶えません。
夢をかなえる場所
コーヒーをふるまう熊谷さんは「カフェを開きたい」という夢を持ち続けていました。その想いを実現したのがほっとカフェです。
「“マー君”の夢をかたちにしよう」と周囲が動き、千葉昭郎(あきお)さんに彼の夢をサポートできないだろうかという話が届きます。千葉さんはマー君と二人三脚、時には仲間の力を借りながらカフェ実現のために動き始めました。
千葉さんは、カフェ実現に向けて動き出した時をこう振り返ります。
「最初に、正弘さんからカフェをやりたいという話を聞いた時、コーヒーの道具も無ければ、知識もありませんでした。私はコーヒーの経験があったので、本格的なハンドドリップを教えました。
簡単に上達はしませんでしたが、正弘さんは諦めず練習を続けたので、『朝日のあたる家で、お客様に出してみよう』と声をかけたんです。朝日のあたる家のスタッフの皆さんは、私たちにとても協力してくれたので、カフェを開催することができました。
『ほっとカフェ』の名称も正弘さんが考えたものです。障がいの理解促進のイベントとして、続けて来れたのは、朝日のあたる家のスタッフの皆さんのおかげと、正弘さんが夢をかなえたい強い気持ちがあったからです」
コロナの影響で参加者がわずか4人となった時期もありましたが、この日の大盛況ぶりを見ると二人の笑顔がほころびます。次回は6月の開催予定で、朝日のあたる家の屋外での開催を考えているそうです。
みんながみんなの応援団
千葉さんは言います。
「このような場所がモデルケースになって、分け隔てなく人々が交流できる場所がもっと増えれば良いですね。障がいの有無に関係なく、夢をかなえたいと諦めずに頑張る人がいたら、応援したいと思う人も増えてくるんじゃないかなと思います」
ここで夢をかなえた熊谷さんは「自分が好きなことができて嬉しいし、それでみんなが喜んでくれるのが嬉しい」と充実した顔で話します。
この日は、市内に住む小学2年生の男の子もお母さんと一緒にカフェに参加していました。この男の子も夢を持っている一人です。
保育士になることを夢みてピアノを習い始め、ほっとカフェでピアノの腕前を披露することもあります。男の子のお母さんは「やりたいことに挑戦してほしい。息子の夢を応援できたら」と将来に期待をよせます。
「カフェを開きたい」という夢が、夢をみる男の子の力になり、みんながみんなを応援し合うコミュニティが作られていくのだと思いました。お互いを理解し、応援しあうこのカフェのあたたかさに触れ、私もほっとカフェの応援団の一人になりました。
取材・文 板林恵