産福連携



実績


竹林伐採作業×就労継続支援B型「蒼」

地域の困りごとが福祉のお仕事へ


今回は、「竹林の伐採と処分」という新たなお仕事現場にお邪魔してきました。コーディネーターの鈴木拓さん、佐々木裕太さんとタッグを組んで作業をしていたのは、大船渡市で就労継続支援B型事業を行っている「蒼」さん。

株式会社ロッツグループが新法人として立ち上げた「特定非営利活動法人ナウベルビー」が運営している事業の一つが「蒼」です。株式会社ロッツのチョコレート事業、カカオブローマで使われているカカオ豆の選別作業がメインのお仕事となっています。

他にも、椿茶の原料となる椿の葉の消毒と選別作業も行っています。

私たちで解決します!!

新しいお仕事依頼があったのは、4月。陸前高田市高田町にあるお寺「浄土寺」の住職さんから、朝日のあたる家へ問い合わせがありました。4月5日付の新聞に掲載された、

「剪定した枝をチップ状に砕く樹木粉砕機を新たに導入し、産福連携推進の一助となっている」という内容の記事を読み、直接連絡がきました。

浄土寺の周りには、いくつか竹林があります。依頼をした住職さんは、

「今までは、竹専用ののこぎりを買ってきて、自分たちでできるところはやっていたんです。家族3人で何日もかけて作業して、切った竹を運んで枝を落としてから重ねていましたが、処理するのも大変で……。新聞を見て、うちでもやってもらえたら助かるなと思って相談してみました」

鈴木さんのお話しによると、実は竹林の伐採作業は今日が初めてではないそうです。

「同じように新聞を見て……と、米崎町に住む高齢のご夫婦からも相談があったんです。『地域の困りごと解決が福祉のお仕事になるなら』と思い、引き受けました。その後、蒼さんに連絡をとって、個人のお宅から作業をはじめました」

蒼の職員の方は、「鈴木さんから『こんなお仕事がありますが、どうですか?』と連絡があって。お仕事をいただけるのは、とてもありがたいことなので、『ぜひ、やらせてください!』とお返事してから、とんとん拍子に進みました」

作業は、以下の内容で分担されます。

①竹林の伐採→コーディネーター・職員

②伐採した竹を運ぶ→利用者・職員

③処分しやすいように分類・分割する→職員・道具を使える利用者

④粉砕するもの、再利用するもので分類する→職員

⑤粉砕する(粉砕機の使用)→コーディネーター

浄土寺での作業は、コーディネーター2人、蒼の職員2人、利用者さん1人で行っていました。

目に見える成果

切り倒された竹を休むことなく、額に汗を滲ませながら運ぶ利用者さん。お仕事をしてみての感想を聞いてみました。

「いつもは、カカオ豆の原材料になる豆のチェックや、殻と実を仕分ける作業をしています。今日は体力を求められる作業ですが、楽しいです。色んなことを経験することができるので嬉しいです」

連日作業に参加した利用者さん。鈴木さんに「竹バスターズ!」に任命されました

おうちはワカメの養殖をしているそうで、小さい頃からお手伝いをしていたこともあり、体を動かすのは得意です。とも話してくれました。

職員の方は「なんでも意欲的に取り組んでくれますね。頑張りすぎてしまうときがあるので、こちらがペース配分を考えてあげて、休憩をいれたり、作業中も声がけをするようにしています」

現場でのお仕事は、利用者さんにとっていい刺激になると話す鈴木さん。

「現場に行ってお仕事をして、直接『ありがとう』と感謝を伝えてもらえるのは、利用者さんのやる気にも繋がるんですよね」

午前と午後2時間ずつ、作業日数は3日間とっていたそうです。

作業の役割分担がきちんと明確にされていることで、どこまでやればいいのかゴールが見え、作業もスムーズに進み、予定より早く終わることができました。

作業の様子を見に来ていた住職さんは、「本当にあっという間ですね。若い人たちに働いてもらえて助かります。他にも竹林があるので、そちらもお願いする予定です。これからもこのようなお仕事が続くようでしたら、今後も依頼したいですね」

また一つ、連携によって、福祉の新たなお仕事の可能性が広がりました。

どんな現場でも笑顔で取り組む

次の現場は、浄土寺さんからの紹介で、竹駒町にある正覚寺さんからのご依頼です。今回の作業内容は、伐採された竹の運搬と処分がメインとなりました。斜面の上に積まれた竹を下まで運び、処分しやすいように分類・分割します。平地とは違い、安全面と体力的な面でも、より注意が必要となってきます。

この日は、コーディネーター1人、蒼の職員4人、利用者3人で作業を行いました。晴天にも恵まれ、日差しもあったため、利用者さんの表情や作業ペースに気を配りながら、明るく声をかけたり、役割を交代したりと、職員の利用者さんへの細かな気遣いが何度も見受けられました。

休憩中は、みんなで輪になり談笑したり、とても明るい現場です。大変なお仕事でも、明るく笑顔で乗り切れる「蒼」には、職員と利用者さんとの信頼関係とチームワークの良さがあるのだと思います。

正覚寺での作業は2日間。今後もお仕事の依頼があった際は、蒼さんが請け負いますと話す鈴木さん。

地域での困りごとが福祉のお仕事となり、依頼をした人も仕事を受けた側も。たくさんの笑顔が生まれる仕組みとなっています。

これからの連携の可能性へ期待

最後に鈴木さんに、竹林伐採作業の今後について伺いました。

「実際に竹の伐採と処分は一般的に1平米当たり1,800〜3,200円と、一定規模をお願いすると結構な費用がかかり、竹の伐採や処分をしたいがなかなか頼めないでいる、といった声も多く聞きました。そこで、業者さんみたいにはできませんが、何日までに終わらせるという期限やそれに準ずる費用等は設けず、この範囲をこのくらいの費用でいかがでしょうか?と依頼主さんと委託費を相談して、なるべく安全に余裕をもって作業ができるようにしています。まずは、お仕事を覚えてもらって、タッグで仕事を受注できればいいなと思っています」と話す鈴木さん。

竹林伐採のお仕事が受注できるようになると、1年を通して安定的に福祉施設への連携ができるようになるという期待があるそうです。

鈴木さんは、「この仕事の良さは、農福連携の仕事がない、1月~5月の時期にできるんですよね。6月から、リンゴやピーマンなど、農家さんが繁忙期になり、そちらの連携のお仕事がメインになります。夏の暑い時期に伐採作業が難しいこともあり、冬から春にかけて竹林伐採のお仕事を受注していけたらと思っています」

新たな連携について、今後の動向に注目していきたいと思います!

取材・文 吉田ルミ子

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