2023年11月8日、立冬を迎えた陸前高田市で「北限のゆず」の収穫が行われました。前日の荒れた天気から一転し、絶好のゆず狩り日和に恵まれ、県内外から14名のゆず狩りサポーターが集まりました。ゆず狩りを行うサポーターは、一般市民から募られたボランティアの方々です。
サポーターの協力が大きな力に
陸前高田市はゆずの生産地の北限とされ、ブランド化に向けた取り組みを「北限のゆず研究会」が中心となり行っています。市内の民家の庭では、古くからゆずの木が自生しており、その高さは4メートルにもなります。ゆずを所有する家庭は、特に高齢世帯が多いため、高い位置に実るゆずの収穫が課題になっています。そのため、毎年サポーターの協力を得ながら家庭に自生するゆずを収穫しているのです。
ゆず狩りサポーターの声
「朝日のあたる家」でインターンシップ中の劉(りゅう)さんにお話を伺いました。
「高枝バサミを使って、高いところのゆずを収穫するのは難しいですね。でも、みんなで協力しながら作業できるから楽しいです」と、木からゆずを一つひとつ丁寧にハサミで切り、地面に落下しないように気を付けながら、収穫していました。
次に、切られたゆずの実に残る枝をカットし、丁寧にカゴに入れていきます。「枝が残っていると、他の実を傷つけてしまうから」なのだそうです。時々ふっと、ゆずの香りを感じます。寒暖差の大きい環境で育つ北限のゆずは、皮が厚く香りが強いのが特徴です。
大阪から2年連続で参加している女性にお話を伺いました。
「ゆずの香りが好きで、この香りを求めて来ました。年に1回は訪れて、ゆず狩りを楽しみたい」と語ります。昨年は収穫したゆずでゆずピールを作り、いろいろな料理に活用したそうです。
大船渡市から参加した男性は牡蠣養殖業を営んでおり、青森県八戸市の朝市で自家養殖の蒸し牡蠣に北限のゆずを添えて販売するなど、独自の取り組みをしているそうです。
「北限のゆずの香りは牡蠣によく合いますね。ゆずを添えると見栄えも良くなりますし。このゆずを、もっと多くの人に知ってもらうきっかけになれば」と話します。収穫段階から関わりたいとの思いで、2年連続でゆず狩りに参加しているそうです。
作業の手を経て各家庭へ
この日、午前と午後にわたって収穫が行われ、昼食には北限のゆずを使用したお弁当が提供されました。「園地でランチ」という北限のゆず研究会の取り組みです。午後の作業の励みになります。
この収穫されたゆずは、次の工程に引き継がれます。
次の作業にあたるのは、社会福祉法人 愛育会の「作業所 きらり」さんです。この日収穫されたゆずは、翌日にはきらりさんとの連携事業として「選果作業(大きさや傷の有無での選別)」が行われます。ここで、生果として市場に出されるものと加工品用に分けられていきます。
加工用になったゆずは、社会福祉法人 燦々会「あすなろホーム」との連携事業として、搾汁作業に引き継がれていきます。このように、北限のゆず研究会は、2ヶ所の福祉法人と連携をしているのです。
ボランティアが協力して行う収穫作業や農福連携による選果・搾汁作業を経て、北限のゆずはお酒やお菓子など様々な商品になり、多くの人に届けられていきます。
北限のゆず一つひとつが、地域や人の連携と絆を育んでいます。
(参考ページ:ゆずの選果作業を通した農福連携 | 朝日のあたる家 (fcfr-asahi.jp))
取材・文 板林恵