農福連携進捗


TAC農家 小金山忍さんの挑戦

「黄金生姜」伝説のはじまり


10月初旬、玉山金山(陸前高田市横田町)の麓にある「Farm Koganeyama(ファーム小金山)」の小金山忍さんが所有する広大な農地で、「黄金生姜(こがねしょうが)」の収穫が始まりました。

秋に収穫する生姜を「新ショウガ」といい、旬の時期を迎えた黄金生姜は、みずみずしい食感で「色」「香」「風味」に特徴があります。すり下ろした後の鮮やかな黄色は時間が経っても退色しにくく、そして爽快な香りと強い辛みがあるといいます。 そのため調理した食材は旨味が引き出され、ガツンと来る辛さなのに、すっきり爽やかな後味がクセになると評判です。

惜しまぬ努力を続けた結果、豊作の5年目を迎える

ファーム小金山の主力商品となる野菜には「ピーマン」「大和ルージュ」「黄金生姜」があります。黄金生姜は就農前から趣味の家庭菜園で栽培していた経験がある、小金山さんにとって思い入れのある野菜でもあります。

「今年の生姜の出来は、(良い意味で)まずまずですね」
穏やかな口調でそう評価する理由は、昨年の不作にありました。
生姜はそもそも温暖な西日本が主な産地で、日照時間や降雨量の多い高知県で多く生産されています。そのため東北地方で育てることは珍しく、寒暖差の厳しい地域での生産は難しい作物なのです。

そこで前職のエンジニアとしての技術を生かし、SNSで情報を集めるなど試行錯誤を繰り返しました。
例えば、土壌改良のため有機肥料にしたり、作付け場所を水はけの良い場所へと昨年とは別の場所に変えてみたり。また、虫や病気の予防にも薬品をドローンで散布するなど、生姜がより良く育つ環境にこだわり続けました。

そして5年目となる今年は「まずまず」という、これまでで一番の出来につながったのです。

収穫は至福の時間

今日は朝日のあたる家の職員が手伝いに来ており、総勢6名で収穫しました。黄金生姜を掘り出すたびに歓声が上がります。それもそのはず、両手からはみ出るほどの大きさの生姜がゴロゴロと掘り出されたのです。

「こんなに株が大きいのにスポッスポッと気持ちよく抜けて、作業はとても楽しいです!」
「抜くときにもっと力を入れるものと思っていたのですが、土がふわふわしていて非常に良い状態。だからスッと抜けるんでしょうね。」
「スーパーでは、こんなに大きな生姜を見たこともなかったし、根っこも太いですね。抜くたびに生姜の香が爽やかで、やりがいがあります!」

まるで子どもを愛でるかのような視線を送る小金山さんと朝日のあたる家の職員の皆さん。初めての作業という方もいて服が泥だらけになりながらも1つ1つ丁寧に作業し、収穫の喜びを嚙みしめていました。

土の状態が良く、掘り起こしは女性の力でも簡単にスポッと抜けて「楽しい!」の声。
抜くたびに生姜の香りがふわっと畑じゅうに広がり、爽やかな気分で作業もはかどります。

今後は規模を広げていきたい!だからこその「農福連携」

黄金生姜の収穫から出荷までの作業は3工程あります。まずは「洗浄」で泥を落としていく作業。次に、生姜と葉の部分を切り落とす「カット」と、最後は「パック詰め」です。

「実は洗浄とカット作業が一番時間と労力を必要とするんです。高圧洗浄機で洗えば早いのですが、それだと生姜の皮がはがれてしまいます。いろいろと試した結果、水圧が丁度良い今の洗浄機になりました。

普段は2人でこの作業をしているので、1日に作業できる数には限りがあります。今年は10アールの畑の収穫量なので、10月から霜が降りる前の遅くとも11月中には終わらせなければなりません。」

洗浄作業は水圧のみで土を取り除く。表皮を傷つけないようにするには水圧の調整が重要。
生姜と葉を切り分ける作業。慣れた手つきですが慎重にハサミでカット。
1つ1つ優しく丁寧に泥を落とします。

収穫したばかりの生姜の皮は非常に繊細です。洗浄前には泥をある程度落として、太い根を1本1本取り除く作業も必要です。収穫から出荷までの全ての行程を考えると、規模を広げるには難しい様子。すべてが手作業なので手間がかかることが分かります。

その作業工程の様子から、タカタアグリコンソーシアム(TAC)コーディネーターの鈴木さんは次のように話します。
「今後、この手間がかかる作業工程を農福連携ができればと考えています。生産量が増えると保管場所も必要になってきますが、朝日のあたる家では温度管理できる冷蔵庫を購入する予定なので、生姜のように温度管理を徹底しなければならない作物の保管には適しています。
作業場と保管場所が同じだと、その分輸送コストや時間の削減にもつながりますしね。
農福連携では、福祉事業所の雇用を促進し、農家さんの生産量を増産できる。まさにWINWINな関係を築けるんです!」

もうすでに来年以降に向けての意見が飛び交い、盛んに情報を交換し合う姿がありました。
TAC農家と朝日のあたる家とのつながりは、切っても切れない強い絆で結ばれているのです。

特大サイズの黄金生姜に満面の笑みを浮かべ、来年度の構想を巡らせる鈴木さん。

進化し続ける「ファーム小金山」と「黄金生姜」

今年の黄金生姜の出来について、小金山さんは太鼓判を押します。
「味には自信があります!生をすり下ろし薬味として食べると、市販の生姜チューブにはもう戻れませんね。旬の時期にぜひ食べて欲しいです。」
おすすめの料理は、カツオの刺身の薬味として。
他にも「お酒のツテにスライスして醤油をちょこっとかけるって最高だよね」や「カレーーライスのスパイスにも」という声も上がりました。

また、『黄金生姜シロップ』(200g1800円)の販売もしているので、寒い冬に向けて生姜湯にするのも良さそうですね。
そして新情報も!なんと「赤生姜」も試験栽培中なのだとか。金色の次は赤色とは、「ファーム小金山」の進化は止まらないようです。

かつて「黄金の国」として人々を魅了した玉山金山のように、挑戦し続ける農家・小金山さんが作る生姜には、黄金のように輝く商品価値が付く。

50年先、100年先まで根付く「黄金生姜」の伝説は始まっています。

【黄金生姜の販売店】

・川の駅 産直よこた(陸前高田市横田町字砂子田169)
・採れたてランド高田松原(陸前高田市竹駒町字滝の里15₋3)
・道の駅 さんりく(大船渡市三陸町越喜来字井戸洞95₋27)
・産直 スター市場(大船渡市立根町桑原16₋1)
・マルイチマルシェ大船渡店(大船渡市大船渡町字笠崎57₋11)
・イーガストすみた(住田町世田米赤畑の国道107号沿い)

取材・文 戸羽美智子

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