ピーマンが告げる、夏の始まり
潤いに満ちた空模様の2024年7月下旬。
陸前高田市横田町にある「ファーム小金山」の畑では、夏野菜のピーマンが雨の潤いを吸収して、ぐんぐん成長していました。
今シーズン、ファーム小金山と「作業所 きらり」のピーマンの農福連携が始まったのは7月22日から。
昨シーズンのきらりさんによる選別作業のスピードや実績から、今年はピーマンの植える数を約1.5倍に増やしたといいます。
今年もきらりのみなさんにお願いするのは、
①収穫後のピーマンのヘタ切り作業
②病気、尻腐れ、虫食い、傷あり等の規格外品の選別
③重量選別
④最終選別
という作業。
小金山さん1人で作業していたら、寝る暇もないほどの細かくて大変な作業です。
小金山さんに農福連携について伺うと、
「昨シーズン、一緒にピーマンの農福連携をやって、すごく助かったんですよ。
収穫に集中できるし、他の作業もできる。
何より、夜に寝られるようになった(笑)。
回数を重ねている利用者さんもいるので、ある程度の選別は17時までにパパっと作業してくれる。
非常に助けられています。」
と話します。
作業はみんなで補い合って
この日作業をしていたのは、何度もピーマン作業をしているきらりのベテラン職員さんと利用者さん、そして初心者の職員さんと利用者さんです。
ピーマンに傷をつけないよう、慎重にヘタ切り作業をしていました。
ヘタ切りと同時に行うのが、病気や虫食いなどの規格外品の選別です。
「加工しないで、お客様の口に直接入るものなので、慎重に見ています。
せっかく収穫しても、自分たちが傷つけて売り物にならなくなってしまうと困るので、ヘタ切りも丁寧にするようにしています。
少しでも農家さんの助けになれたら嬉しいですね。」
と話す初心者の利用者さん。真剣さが表情にも表れています。
今年は選別表が用意され、選別がわかりやすくなったそうです。
判断に困ったときは、職員さんに確認していました。
「傷ですね、よく見つけましたね。」と声を掛ける職員さん。
利用者さんの作業内容や安全を確認するだけではなく、モチベーションも上げる職員さんには感服です。
小金山さんのピーマン作業といったらお馴染み、サクランボの選別機を改良した「ピーマン重量選別機」。
今年はさらに改良を重ね、より作業しやすくなったそうです。
はじめに重量選別機を操るのは、ベテランの利用者さん。
「頭から乗せたらいいかしら、おしりから乗せたらいいかしら。」と試行錯誤しながら作業開始です。
細かな作業が得意なこの利用者さん。
ピーマンを手に持つときに、もう一度傷や病気がないか確認して「これ、ダメだわ。」と規格外品を外していました。
また、初心者の職員さんに「カゴがいっぱいになったら、交換したほうがいいですよ。」とアドバイスする場面も。
経験を重ね、職員さんと利用者さんが力を補うあうことで、より適格で最適な作業ができるのですね。
今年も酷暑が予想される陸前高田。
作業初日は猛暑で、さっそく小金山さん特製のミストが稼働したそうです。
また、作業場所や日陰の場所も増え、きらりさんがより作業しやすい環境に改善されたのだとか。
何か要望があれば小金山さんに伝え、それをアップデートして改良していくのが、小金山ファーム×作業所きらりの農福連携です。
夏本番への道のりが始まる
ピーマンの収穫はこれからが本番です。
「これくらいの量、まだ序の口ですよ。収穫されたピーマンがどんどん運ばれて、カゴが山積みになるんだから。」と笑うベテランさんたち。
ピーク時には1日で350~400kg収穫される見込みのピーマンですが、今年はピーマンの選別作業に新しい展開を考えているそうです。
気持ちよく仕事ができるように、そして、改善点が出たら解決していけるように。
農福連携のパートナーとしてお互いが信頼を寄せあえるようになった、小金山さんと作業所きらりの夏は始まったばかりです。
↓昨年の連携の様子はこちらからご覧いただけます↓
取材・文 熊谷 蘭子