いざ農福連携技術支援者研修へ
朝日のあたる家では産業と福祉を繋ぐ、産福連携を推進しています。
その中でも特に農福連携が活発に行われ、盛り上がりを見せていますが
そんな農福連携においてこの度
朝日のあたる家のコーディネーターの鈴木が
「農福連携技術支援者」として農林水産省から認定されました。
農福連携技術支援者とは
▶️ https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kouryu/230510.html
農林水産省が行う農福連携に関わる人材のための研修で
農福連携を現場で実践する手法をアドバイスする専門人材を育成するため
「農福連携技術支援者育成研修」を実施しており
応募選考、実施研修、試験があり
合格すると農林水産省の認定をうけ
農福連携技術支援者として名乗ることができます。
応募選考がはれて通り
時を少し遡って今年7月の5日間
茨城県の農林水産研修所つくば館水戸ほ場にて
実施研修と試験を受けて参りました。
研修内容は
事前のWEBでのe-ラーニング座学18時間
実施研修とグループワーク4日間+終了試験
と、なかなかのボリューム。
農福連携概論から始まり
農業の基礎から農作業の流れ、経営、栽培技術、農作業支援技法
障がい者福祉の概論や障がい者雇用、障がい福祉サービスの仕組み
障がい特性、職業的課題や業務分解まで
農業と福祉、双方の分野を隈なくまとめてあるカリキュラムでした。
疑似体験を通した支援実習
グループワークでは視覚障がい者への播種作業や挿し芽作業の支援を
準備段階から導入までをロールプレイし 「支援する側」と「支援を受ける側」の
双方の体験を行うものからスタート。(レベルが高い)
視覚障がい者への作業提供として2種類行い
・ポリポットへのキャベツの種と枝豆の種の播種(粒数指定、穴の長さ指定)
・ハーブの挿し芽(長さ指定のカットあり)
を疑似体験として行いました。
自身でも視覚障がい者の介護経験や、類似体験としての歩行体験はしたことはありますが
ハサミや道具を用いた農作業体験はしたことがなかった為
感じたことのない緊張感と、手先と耳の情報しかない不安感を直に経験。
大変に盛り上がったロールプレイ後は、準備して支援する側と支援を受け作業に取り組む側
双方で感じたことを言語化して分類し、気づきを発表し合いました。
農林水産省研修ほ場での実技研修の様子
その他、圃場での実施研修では
・刈払機に実技やメンテナンス、鎌の使い方
・セルトレイへの播種や灌水
・小松菜の収穫と出荷調整
と様々経験させていただき、その各種作業もグループワークで振り返りを行いました。
農福連携技術支援者の専門性とは
研修を通して振り返りの際に、特に重点とされたのが「注意配分数」という聞きなれない言葉。
それは農作業の各作業を工程分解し、その各工程の流れにおいて注意を向ける「動作」や「対象」の数を細かく分析し、注意配分数として指標化していくものでした。
これに加え作業自体の「巧緻性」を分析し、「巧緻性」と「注意配分数」で各作業の難易度評価をしていくもの。
これは単に作業の難易度を示すものだけではなく、どのような支援が必要かを明確にする座標になるものでした。
農作業に必要な動作には
つまむ・握る・持つ・話す・置く・差す・折る・曲げる・入れる・出す・引く
押す・押さえる・叩く・打つ・回す・振る・切る・刈る・結ぶ・解く・縛る
前屈・ひねる・伸ばす・掘る・ならす・耕す・歩く・運ぶ・登る・降りる・積む・etc…
と様々あり、どの言葉を適切に分かりやすく伝えるか、この辺りはとても考えさせられました。
(農業特有の曖昧な表現や塩梅って確かにあるよなぁと)
また障がい者へ指導支援するにあたり、対象者がどの辺まで言語理解があるか、またその方の理解度に応じて、言葉での指示以外にもお手本の示しや見本の図解など、配慮が必要であることは
さらにポイントだと思います。
この評価を通して、作業上の注意点をさらに段階的に理解することができ
指導を行う際の「わかりやすい指示」と取り組みやすい「効率」に繋がることが分かりました。
(今まで意識していたつもりでも、まだまだ抽象的な指示は多かったなと自身でも反省)
また作業の構造化も必要で
与えられた職務を一人で自立して遂行できるように
・何をするのか
・どれくらいするのか
・どうなれば終わるのか
・終わったら次はどうするのか
などの情報をわかりやすく伝えること、も大事なポイントだと思います。
このような分析の目的は
・障がい者のできる作業を見つけること
・環境や道具を工夫することで障がい者の作業領域を拡大させることができる
ことにもつながっています。
【難易度の例】
難易度の低い作業
→ 除草(手作業)
玉ねぎ収穫
花壇灌水
粒状の肥料まき
中程度の作業
→ 果菜類収穫
セルトレイ播種
ポット苗灌水
トマト キュウリ誘引
野菜苗の定植・間引き
難易度の高い作業
→ 果樹袋がけ
刈払機草刈り
果樹剪定
研修で用いた分析表は淡路式農作業分析表といい
こちらからダウンロードできます。
淡路式農作業分析表
▶️ https://www.awaji.ac.jp/htcp/wp-content/uploads/sites/3/2022/04/b9c30dc0cadda7a2d14b1a8e70c2fbcc.pdf
求められる役割
実施研修を通して
農福連携コーディネーターは
農家と福祉をつなげるマッチングを図る、とすると
農福連携技術支援者は
農作業を細分化して作業と利用者とのマッチングを図る
ということが理解できました。
農福連携で農作業を分解・分析して作業の特徴や難易度を農業者や福祉へ説明するプロセスは
作業と人との適切なマッチングを行う上で中核をなす技術で
農福連携技術支援者に期待される最も重要な役割と理解できました。
最終日は茨城県つくば市の「ユアプレイスつくば」さんの視察研修
ユアプレイスつくばさんは、農福連携を表彰するノウフクアワード2023において
優秀賞を受賞されています。
ノウフクアワード2023受賞団体
▶️ https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kouryu/240119.html
ユアプレイスつくばHP
▶️ https://yf-tsukuba.com/your-place
ちなみにこちらのノウフクアワードですが
2022年には鈴木が水福連携事例でコーディネートとエントリー執筆を行い
岩手県初の受賞(チャレンジ賞)もしています。
ノウフクアワード2022 チャレンジ賞 三陸ラボラトリ
▶️ https://noufuku.jp/wprs/wp-content/uploads/2023/01/award2022_19.jpg
↓水福連携に関する過去記事はこちら↓
農福連携の魅力とその可能性
研修を通じて
専門的な技術や知識と経験はもちろんのこと
共に学んだ全国の農福連携の推進を目指す仲間たちとの出会いや語らいは
とてもとても尊いものでした。
この出会いだけでも研修に応募して受講できて良かったとすら思います。
今日も全国の各圃場で同じ空の下
みんな頑張っているんだなと思うと
これからもとても励みになります。
みんなで地域を、未来を、可能性を耕して
農福連携で一次産業を支えて行きましょう!!
そして無事、農福連携技術支援者にも合格し
修了証書兼認定証をいただきました。
これからもより一層、地域の農福連携に努めていきたいと思っておりますので
農福連携はお気軽に朝日のあたる家までご相談ください!!
まだまだ農福連携の夏は続きます
文 鈴木 拓