年の瀬もせまる12月26日、朝日のあたる家には賑やかな笑い声が響いています。
この日開催されたのは、竹ワークショップ「門松づくり」。
朝日のあたる家では、農福連携事業として、市内の放置竹林の整備に取り組んでいます。活用されなければ価値を失い埋もれてしまう竹を「未利用資源」として新たな形に生まれ変わらせる取り組み。
その一環として行われたのが、今回のワークショップです。
ワークショップが毎月の楽しみに
第5回 竹細工ワークショップ「門松づくり」
開催日: 2024年12月26日(木)
時間: ①9:30〜11:30 ②13:00〜15:00
会場: 朝日のあたる家
参加者: 午前の部22名、午後の部19名 合計41名
助成: 令和6年度 陸前高田市「心の復興交流事業」
午前も午後も満員となっており、このワークショップを楽しみにしている人が多いことが伺えます。みなさん〝参加したら、そのまま次回の予約をして帰る〟というルーティンになっているのだそう。
門松は新年を迎える伝統的な縁起物として、よく知られていますが、
その役割は神様を迎える「依代(よりしろ)」であり、その素材一つひとつに意味が込められています。
歳神様はこの依代を目印に、正月の松の内の期間だけ天から降りて来るとされています。
材料それぞれにも意味があり、
・南天は「難を転じる」
・稲は「五穀豊穣」
・百合のがくは「次の年の実りや幸運を祈る」
・松ぼっくりは「繁栄や健康と長寿」
いずれも新年の幸福や無病息災を願う象徴です。
幼少期の体験が伝統を伝承する
参加者の多くが「門松づくりは初めて!」と話すなか、講師を務めた地元出身の砂田さんは、幼少期から門松づくりにふれてきた経験を持つ、数少ない存在です。
「昔は大人たちの手伝いで門松を拭いたり、いろんなお手伝いをしていたよ」と懐かしそうに話す砂田さん。
普段は、朝日のあたる家で手芸などを楽しんでいましたが、2024年8月に、竹細工ワークショップが始まってからは、竹の扱い方に関するアドバイザー的な役割に。
そして今回は、初めて講師として門松づくりをレクチャーをすることになったのです。
今回使う材料の稲や南天、百合のがく、松ぼっくりは砂田さんを含む地域の方々が用意したものです。
事前にあふれる程の量の材料を準備し、講師を務める砂田さんは
「みんなと一緒に作るのは、ほんとうに楽しいね」と話します。
そして参加者も「先生の技術を少しでも吸収して帰りたいと思っているのよ!」と夢中で作業に取り組んでいました。
門松飾りの一つ「吉祥結び」には、輪が重なり合う形状から「縁を結ぶ」「幸運が巡り続ける」という願いが込められています。
参加者が「30分もかかっちゃったのよ」と話すように、吉祥結びは少し難しい結び方。
砂田さんは、その難しさも想定し、メモリ付きの台紙も用意したのだそう。
冬休み中の小学生も、門松づくりに挑戦しています。
伝統の技を体験し、こうして後世につないでいくことの大切さも感じます。
次に、砂田さんを囲んでしめ縄づくりにも挑戦。 しめ縄づくりは、初めておこなう人がほとんどで、稲を縄状にねじり上げるにはコツがいります。そんななか、砂田さんは手慣れた手つきでいとも簡単に仕上げていきます。
ある参加者は「70年も生きてきて、しめ縄を作るのは初めてよ」と、砂田さんの手元を見ながら真剣に仕上げていきます。
水引飾りやしめ縄づくり、仕上げの飾り付けには多少の苦戦もありましたが、参加者たちは助け合いながら、完成に近づけます。
門松が華やかさを増すごとに、みなさんの嬉そうな笑顔もあふれてきました!
地域の資源や伝統をつないでいく
今回の門松づくりで使われた竹は、市内の放置竹林から伐採されたもの。
活用されなければ埋もれてしまう竹を、「未利用資源」としてとらえ、新たな形に生まれ変わらせる活動です。
この日感じたのは、竹だけでなく、人の持つ力にも光が当てられていることです。
講師を務めた砂田さんのように、まだまだこの地域には、眠る知恵や経験を持つ人がいると思います。その力を生かす場を作ることが、このまち全体の活力を引き出すカギになるのではないでしょうか。
それが若い世代に、そして子どもたち世代につながれていくと考えたら、なんだかとてもワクワクしました!
次回のワークショップのお知らせ
ということで、次回はなんと「親子で竹灯りワークショップ」が開催予定とのこと。
竹に模様をつけ、ドリルで穴を開け、灯りを灯す「竹灯り」を作る企画です。
親子で楽しめる内容になっていますので、ぜひご参加ください。
さいごに―
この地域には竹や砂田さんのような、まだ知られていない「宝物」があることを、改めて感じました。もっともっと未知の地域の力に出会いたいと、そんな希望を感じるワークショップでした。
苦戦しながらも自分で作った門松を玄関に飾るとき。
そのひとときが、行く年への感謝と、来る年の幸福に思いを馳せる時間になったのではないでしょうか。
取材・文:板林 恵
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