朝日のあたる家「竹灯りワークショップ」レポート
竹灯りが映す、一人ひとりの物語

春の訪れを待つ2月11日、竹灯りワークショップが開催されました。
このワークショップは市内の放置竹林で伐採された竹を有効活用しようと始めたもので、2024年8月に開始され、これで8回目となりました。
「地域資源の循環」と「もの作りを通じた交流の場の創出」を目指しています。
開催を心待ちにされるイベントへと成長
第7回 竹細工ワークショップ「竹灯りづくり」
開催日: 2025年2月11日(月/祝日)
時間: ①9:30〜11:30 ②13:00〜15:00
会場: 朝日のあたる家
参加者: 38名
助成: 令和6年度 陸前高田市「心の復興交流事業」
今回は「休日に開催してほしい」というリクエストにお応えした企画で「やっと参加できた!」と嬉しそうに話す参加者でにぎわっていました。

「やりたいことがあるのは、幸せだ」千田さんの挑戦
回を重ねるごとに、参加者のかかわり方も変化してきました。
市内に住む千田さんが、その一人です。
はじめは参加者でしたが、前回からは講師として参加者をサポートしています。
りんご農家を営む千田さんは竹細工の面白さに気づき、今では工具一式をそろえ、ご自身で竹を切って創作しているそうです。竹の加工の仕方や汚れの落とし方は、朝日のあたる家に足を運び、身につけたのだそう。


朝日のあたる家の事務局長の臼井さんは、
「ワークショップをきっかけにして、主体的に関わってくれる方が一人でも生まれたらいいなと、ちょっと期待していたんです。だから千田さんのような存在が嬉しいし、頼もしいですね」と、開催の手応えを感じています。

一灯一灯に込められた物語
【竹にふれ、よみがえる記憶】
市内在住のSさんは、竹細工を作るのは初めて。
作業を進めるなかで、Sさんの思い出話をしてくれました。
「私が小さい頃はね、雪が降ると親が竹でスキーを作ってくれてね。切った竹を2つに割って、つま先側を火であぶると曲がるの。それをスキー板にして遊んだものよ」と懐かしみます。竹は古くから生活の身近にあったのだと教えてくれました。

【家族が集まる場所に】
市内の小学校に通うMちゃんは、今回で2回目の参加。
前回はお母さんと、今回はお父さんと参加し、完成した作品を誇らしげに見せてくれました。

これで、Mちゃんとご両親が作った竹灯りは全部で4つになりました。
みんなの分を自宅の寝室に並べているのだそうです。
成長とともにMちゃんの宝物も増えていったら嬉しいですね。

【 3.11への祈りを込めて】
市内から参加した女性は、初めてドリルを使ったそうですが、すぐに操作にも慣れ、リズムよく穴を開けていきます。
「穴を開けている時間が無心になれて、心地よかったです」と話します。

また、このともしびには、東日本大震災で亡くしたご両親への想いが託されていました。
「3月11日も間もなくでしょ。竹灯りは玄関に置くつもり。この灯りを目指して両親が来てくれるかなって。デザインをうさぎにしたのも、亡くなった母がうさぎ年だったの。見るたびに母のことを思い出せると思って」と、ご両親の拠り所となるよう願いを込めていました。
ひとつひとつの竹灯りが照らすのは、人々の心に宿る想いなのだと感じます。
ともに創り、支え合うワークショップ
竹灯りづくりは単なるものづくりの場ではなく、心に眠る想いを形にできる場になっています。
人を偲び、人を想う時間――。
この地域の人たちは東日本大震災から多くの困難を乗り越え、助け合いながら復興に向かって歩んできました。その姿は強くまっすぐ、しなやかな竹の姿と重なります。
節目を作りながら復興したこの地域は、これからも困難をも乗り越え、歩み続ける強い力を持っているはずです!
竹細工ワークショップは、今回でひと区切りとなり、来年度の開催に向けた準備期間へと入るそうです。また新たな竹灯りがともる、その日を楽しみに待ちたいと思います。


取材・文 板林恵
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